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私が新人だったころに、私の組図を見た上司からこのように言われたことがありました。「もっと小さくできないか?」

その当時、私としては必要以上に小さく設計する必要は無いと思っていたのですが、その上司の言われた通りスペースを詰めて文句を言われないくらい徹底的に小さく設計してみました。
それを見た上司は「ここまで小さくできたか。」と納得していただけた様子でした。
実際に現物が出来上がり見てみるとコンパクトで無駄の無い設備になっていました。
それ以来、設計は省スペース&シンプルを心掛けるようにしています。
もちろん、汎用性のある部品を使い、メンテスペースや組立性は十分に考慮します。時には図面を現場に持って行き、組立をする人に見てもらったりしたこともありました。生産設備においては、工場の床面積当たりの生産性を考えると極力コンパクトな方が良いからです。

しかし、その逆の経験もしたことがあります。
ある仕事でアメリカのシカゴに行き、そこで溶接機の設計に携わったことがあります。その際もいつもの様に省スペース設計をしていると「NG」が出ました。
なぜなら、アメリカでは作業者が乱暴に扱っても壊れにくい頑丈な設備が必要だと言われたのです。設計はまさにケースバイケースだと言えます。

私は、長年大手電器メーカーの生産技術本部内に常駐し、メーカー担当者と一緒に仕事を行なってきました。良い担当者と巡り合い、楽しく仕事に打ち込むことができたので私は本当に恵まれていたと思います。やはり仕事は人間関係が大きなポイントになります。

長く同じ担当者と仕事をしていると、お互いが、1から10まで言わなくても意思が伝わるようになります。フォローなどで大変な時には少しでも担当者の役に立ちたいと思うようになります。担当者の範疇なので出来ないこともありますが、私は出来ることを探して色々とやってきました。それは、現在良い経験になっており、技術者として私自身の大きな財産になっています。

記憶に残る仕事は幾つもありますが、その一つは、デジタルビデオテープの真空蒸着装置の設計でした。 これはこれまでの組立機とは全く違ったプロセスで製品を作る機械でした。真空設備・フィルムを扱う点・電子銃を扱う点・100Kgを超える稼動物を真空中で動かし、尚且つ着脱可能にする点など私にとっては未知の世界でした。

しかし、素晴らしいチームで力を合わせて取組むことができました。この仕事では、頻繁に加工業者と打合せをしたり、加工現場まで足を運んだりしました。部品が揃い、組立が始まると組立現場にもよく行きました。100Kgを超える着脱式の稼動物を動かす時は非常に緊張しましたが、無事に動作し安堵したことを覚えています。

その後、後継機を数台受注することができ、継続して同じメンバーで改良型を送り出せたのも嬉しいことでした。

私はこれまでの経験を通して次の点をいつも心に留めています。

・設計は「ケースバイケース」で柔らかい頭脳が必要である。
・技術者にとって「経験」は財産である。
・仕事は「人間関係」が重要である。

これからも、良い人間関係を培いながら、良い仕事を続けて行きたいと思っています。
 
 
 
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